安原 崇哲 特任講師が文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞
当センター教員の安原 崇哲 特任講師が令和5年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞しました。
詳細は以下の通りです。
〇業績名:
「転写活性化領域で染色体転座が発生する分子メカニズムの研究」
〇業績内容:
転写が活性化している遺伝子領域で染色体がつなぎ変わる転座は、がんなどの疾患の原因となる。しかし、それらのゲノム異常が発生する詳しい分子メカニズムは不明であった。
氏は、染色体転座発生過程を損傷発生、染色体集合、修復異常に切り分け、まず転写活性化領域で染色体転座を抑制するDNA修復経路を2つ同定した。さらに細胞ストレスによって形成される凝集体を介して転写活性化領域が集合し、染色体転座の頻度が上昇することを発見した。長年の難問に対して、氏は独自の実験系や最先端技術を駆使することで明快な答えを与えた。
本研究成果は、がん発生の根源的な分子メカニズムの理解による、新たな予防・治療戦略の開発に役立つ可能性がある。また配偶子における染色体転座はダウン症や不妊の原因となることから、将来的には生殖医療における問題の解決にも寄与すると期待される。
〇主要論文:
「Condensates induced by transcription inhibition localize active chromatin to nucleoli」 Molecular Cell誌、vol.82、p 2738-2753、2022年発表
「Human Rad52 promotes XPG-mediated R-loop processing to initiate transcription-associated homologous recombination repair」 Cell誌、vol.175、p558-570、2018年発表
〇コメント:
この度はこのような名誉ある表彰を頂き誠に光栄です。研究を始めて以来一貫して取り組んできた研究をこのように評価して頂いたことは大変励みになるとともに、非常に嬉しく思っております。これまで研究を進める中でご支援、ご協力頂いたすべての方々に深く御礼申し上げます。生命がもつ精巧かつ洗練されたシステムを解き明かすことは、決して容易なことではありませんが、一見複雑にみえる現象に対して真摯に向き合いながら、それらを深く理解し、紐解いていけるよう、今後とも精進して参りたいと存じます。
〇リンク: